マンダリン オリエンタル ホテルの「香港ザ・クリュッグ ルーム」のデザイン制作の際、初めにエルメスに食器類の提供を依頼しました。私たちは、オーダーメイドのテーブルウェアコレクションをデザインするというまたとない機会を得たのです。「クリュッグ ルーム」は世界で一つだけのものでなければならないと考え、私たちはプロジェクトに関わる3つの一流ブランド(クリュッグ、マンダリン オリエンタル、エルメス)の価値観に共鳴しつつ、香港との芸術的なつながりを持つデザインを目指しました。
コンセプトは、香港の現代書家、馮明秋(Fung Ming-Chip)氏の作品から着想を得ました。彼の書体は、グラスの中で立ち上るシャンパンの泡を彷彿とさせるものでした。私たちは、「祝宴」をテーマにした中国の古典詩を調べ、料理とワインを楽しむ様子を表現した文章を厳選しました。
馮明秋氏は、伝統的な薄い上質紙に文章を手書きしました。次に、私たちのチームは、手書き文章の自然さを保つことに細心の注意を払いながら、デザインに合わせて拡大、縮小し、デジタル処理して1つ1つのアート作品として再構成していきました。丸や四角といったプレートの形に関わらず、各プレートの枠の中に、いともたやすく文章を一気に手書きしたように見せることに作業の複雑さがありました。
モチーフは、書家の魅惑的な筆致によるインクの拡散効果を忠実に再現するため、グレー一色で表現されています。また、それぞれの作品には、作家が彫ったミニチュアの印章から、遊び心ある小さな中国の赤いスタンプを所々に施しています。